新しい総合物流政策大綱が、6月15日に政府による閣議決定されました。総合物流施策大綱は5か年の周期で、過去、6次まで実施されています。今回は7次の政策大綱になります。6月29日、マテリアルフロー様と当社が共催しました「2021ロジスティクス DXオンラインセミナー」において、国土交通省 総合政策局物流政策課 阿部竜也様に新しい総合物流政策大綱について講演いただきました。ご講演内容を要約して、ここに記載します。
新しい総合物流政策大綱の背景は、以下のようなことがあります。
国内でのトラックの積載効率(営業)が50%を割っており、効率が悪い状況が続いています。さらに、ECの拡大によって、少量多品種の配送が増えおり、宅配は再配達率が高いという特徴があり、積載効率に影響しています。
人口の減少、高齢化社会によって、労働力不足が深刻です。トラック協会によると2020年には、約4割の会社でドライバ不足が起きてきます。内航海運が国内でかなり占めるが、内航船員も高齢化で、労働力不足が大きな課題になっています。
アジア領内での国際分業が進展し、サプライチェーンのグローバル化が深化しています。そのような中、日本は、ASEANとの取引が急増しています。それは、米国とほぼ同じ規模であり、物流企業の海外進出、特にASEANへの進出が顕著になっている。
菅義偉内閣総理大臣は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言されました。しかし、物流の輸送部門でCO2排出は18.6%を占め、貨物自動車では6.8%になります。物流によるCO2排出の削減は不可欠です。
コロナ禍の様々な影響を、人とものの動きの停滞から、物流業界が受けています。B2Bや国際物流は生産量の停滞により、昨年は低迷しました。ただし、回復傾向あります。一方で、B2Cは巣ごもり需要のため宅配を中心に増加しています。米国でのB2C急拡大により、コンテナ生産量の伸びないこともあり、コンテナ不足問題が深刻化しました。また、港湾内でコンテナが混雑する事態になりました。これにより、配給途絶リスクが顕在しました。
それらの背景の中、新しい総合物流政策大綱には、次の3つの柱で施策があります。
①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化 (簡素で滑らかな物流)
②労働力不足対策と物流構造改革の推進
③強靭で持続可能な物流ネットワークの構築 (強くてしなやかな物流)
今回の新しい総合物流政策大綱は、①の物流DXが中心にあり、DXのなかでX(トランスフォーメーション)が重要視されており、すなわち仕事のやり方を変える必要があります。それに関係した以下のKPIが設定されています。
<主なKPI>
- 物流業務の自動化・機械化やデジタル化に向けた取組に着手している物流事業者の割合 【100%(2025年度)】
- 物流業務の自動化・機械化やデジタル化により、物流DXを実現している物流事業者*の割合 【70%(2025年度)】 (*物流業務の自動化・機械化やデジタル化により、従来のオペレーションの改善や働き方改革などの効果を定量的に得ている事業者をいう。)
- 物流業務の自動化・機械化やデジタル化に向けて、荷主と連携した取組を行っている物流事業者の割合 【50%(2025年度)】
【プレスリリース】「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」を閣議決定
~「簡素で滑らかな物流」、「担い手にやさしい物流」、「強くてしなやかな物流」の実現に向けて~
これらのKPIのターゲットを達成するために、①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化においては、以下の4つの柱で構成されます。
- 物流デジタル化の強力な推進
手続書面の電子化の徹底、サイバーポートの推進による港湾物流の生産性向上、 データ基盤の整備、特殊車両通行手続の迅速化、ICTを活用した点呼の推進 - 労働力不足や非接触・非対面型の物流に資する 自動化・機械化の取組の推進
倉庫等の物流施設へのロボット等の導入支援、 隊列走行・自動運転の実現に向けた取組の推進 等 - 物流標準化の取組の加速
加工食品分野における標準化推進体制の整備と 周辺分野への展開、業種ごとの物流の標準化の推進 等 - 物流・商流データ基盤の構築等
物流・商流データ基盤の構築と社会実装の推進、物流MaaSの推進 等
物流分野は、まだまだ労働集約型でデジタル化の余地が大きく、自動化、差別化において、今後のDXが推進される分野です。期待したいです。
さらに詳しくは、こちらのオンデマンドセミナーをご視聴ください。
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