現在は、VUCAの時代と称されます。VUCAは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、未来が予想できない状況を示します。食品産業も例外ではなく、環境を見ますと、次のようなVUCAの破壊的な事象が発生しています。
サステナビリティ:豪雨や熱波などの毎年繰り返される自然災害、地球の砂漠化による水の不足、世界的な人口増と中流階級の増加。これらによって食糧不足がますます深刻になります。このためには、農業や食品の生産量を上げながら、食品ロス、CO2排出を削減するサステナビリティが待ったなしになっています。
食品の安全性とコンプライアンス:企業の多大な努力により、日本では現在では問題にあまりなりませんが食の安全は海外ではまだ大きな課題です。毎年多くの人が、食害にあっている。そのために、リコールなどの強い規制があります。農林水産省は、「2021年の農林水産物・食品の輸出実績」で、2021年の農林水産物・食品の輸出額は、1兆2,385億円となり、2020年比では25.6%の増加、額では2,525億円の増加となった報告しています。海外進出する企業には、食品の安全性とコンプライアンスの対応は不可欠です。食品の安全性に関わる問題に迅速かつ的確に対応するためには、農場から食卓まで、デジタルで信頼性の高い情報が必要です。一方で、国内のデジタル化の遅れは深刻で、デジタル人材の確保と、モダンなアプリケーションへの投資が望まれます。
消費者嗜好の変化:D2Cで産地から直接購入したり、必要な量の食糧を購入したりと、消費者の嗜好がサステナビリティに向いています。よりクリーンなラベル、オーガニック、フェアトレードが必要です。また、農林水産省消費・安全局消費・安全政策課の「令和3年度 消費者の意識に関する調査」によると「、食品ロス問題を知っているか聞いたところ、「知っている」と回答した人が 80.9%(「よく 知っている」23.1%+「ある程度知っている」57.8%)であった。一方で、「知らない」と回答した人が 19%(「あまり知らない」12%+「全く知らない」7%)であった。」とのことで、消費者でも関心が高まっている分野だといえます。
透明性:上記の消費者嗜好の変化によって、ますます、企業には透明性が求められます。サスタナビリティ活動の証明、偽造防止、食品の原産地を感情的に関連付けなど、単一のデータソースを基盤した事実の提供が求められています。また、非財務会計の報告義務が近づいており、ESG的な観点での透明な経営が必要になります。
調達の問題:今まさに、ロシア、ウクライナ問題で直面している事象です。不足だけではなく、原材料の価格の上昇、リンやチッソなどの肥料の価格の上昇、人口増によって原材料の取り合いが起きています。一方で、日本の摂取カロリーから見た食料自給率 37%(令和2年度)で、先進国では最低水準です。最近、若干増えたという報道がありましたが。調達は大きな課題です。代替のサプライヤや原料への切り替えが必要ですが、化学でできることがまだ少ないので、そんな簡単な話ではありません。
このような、今までになかった破壊的な事象が頻発していますが、これが私たちのニューノーマルであり、食品産業は、継続したイノベーションによって解決していかないと、生き残りが厳しくなります。よって、サステナビリティに対応した、サステナブルな製品開発が、必要になります。そのためには、Sustainability as designed、Sustainability as planned、Sustainability as executed、の考え方をもつのがよいかもしれません。要するに、消費者を常にモニターしつつ、製品を研究開発する、サプラインチェーンを管理する、生産を行うと、すべての商品のラインフサイクルで、サステナビリティを中心に位置づけた取り組みが求められます。このためには、PLM(製品ライフサイクル管理システム)が有効なショリューションになります。
一方で、農水省の令和3年の経営課題の調査によるち、「経営上の戦略として、今後、特に重点的に取り組むもの」については、食品製造業では「生 産性向上」と回答した割合が 34.4%と最も高く、次いで「事業継続」(25.3%)、「人材 の確保や育成」(18.0%)の順であり、製品開発への優先度をどう高めるかも考察ポイントになります。
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