ERPも近代化が進み、老朽化した基幹システムのアップグレードを検討されている企業が多いと感じます。そのとき、次期ERPの 選定のためのチームを作ったとして、次は何をすればいいのでしょうか。それは、選定のためのケースを作ります。そのためには、まず、具体的なビジネス・ニーズやビジネス戦略に基づいたERPの目標を設定する必要があります。日本でありがちなのが、業務要件やERPの機能要件からERPの選定を考え、せっかくモダンなERPを導入しても、データが活用されない、業務が部分最適化されるなどの、改善程度の効果しか得られないことが多いです。そのような事態に陥らないためにも、ビジネス戦略から始め、自社のビジネスだけでなく、自社のビジネスが関わるエコシステム全体の活動、例えば製造業ではサプライチェーン全体の活動で、そのテクノロジーやデータがどのように活用できるかを想定することが重要です。
自社に最適なERPを選定するために、その導入目標を設定する際には、次の4つの主要なビジネスドライバーを考慮する必要があります。
- 業績を向上させる
- データドリブン経営を促進する
- 従業員をより生産的に仕事に集中させる
- 拠点内・拠点間の統合・連携を強化する
それぞれを以下に、解説します。
1. 業績を向上させる
このドライバーは言うまでもありません。新しいERPシステムは、業績向上のためにどのような核となる強みを提供すべきでしょうか?その答えは、業務の効率を改善して、新しい製品やサービスを提供し、コストを削減し、成長を加速させることです。それが業績への貢献です。しかし、プロセス全体の透明性の向上が、とても大事です。
例えば、注文が行われたとき、すべての認可されたERPユーザーは、注文要求を見るだけでなく、請求書発行や現金回収への注文入力、生産、流通から、ビジネスプロセスを通じてその進捗状況を追跡する必要があります。リアルタイムの更新と自動化されたワークフローは、生産性を向上させ、知識のギャップを埋めることができます。その結果、顧客は従来よりも迅速かつ少ないエラーで注文を受け取ることができ、企業のリーダーはよりスマートで迅速なビジネス上の意思決定を行うためのインサイトを得ることができます。
ビジネス目標をランク付けし、それらを測定するための主要業績評価指標(KPI)を確立することで、企業のニーズに最も適したERPシステムを選択するのに役立ちます。
2. データドリブン経営を促進する
日本では遅れがちですが、海外の多くのERP事例では、データ活用がモダンなERPへの期待値になっています。ERPによって、プロセス全体で発生するトランザクションデータと外部データを、単一のデータソースに管理して、すべての権限のある社員が容易にアクセスすることができるようになります。データ活用が進むことで、データに基づいた意思決定が促進され、また、新しいビジネスインサイトを得ることができ、それが業績向上への貢献になります。データ活用には、レポーティングから異常値の発見、需要の予測分析、在庫の最適化などがあります。ERPに組み込まれたBI機能を使うことで、スプレッドシートによる無駄な作業も軽減することができます。ERPはトランザクションデータを管理するSoR(Systems of Record)に分類されますが、同時に社員やサプライヤー、顧客とのエンゲージを強化するSoE(Systems of Engagement)の側面も考察する必要があるのです。
3. 従業員をより生産的に仕事に集中させる
多くの企業は従業員の仕事を容易にするために、ERPシステムを導入しています。モダンERPは、直感的で使いやすく、ユーザーがちょうどソフトウェアを操作したり、拡張したりするために複雑なソースコードやプログラミング言語を学ぶことを必要としません。また、日常的な業界固有のプロセスは、ERPの機能を通じて標準化または合理化できます。この特長は、異なる手順を使用して別の従業員によって処理されるときに、または、ソリューションのカスタマイズを必要とするときに発生する不整合やエラーを排除します。このようなインフラが整えば貴重な従業員は、労働集約的な作業に費やす時間が減り、付加価値の高いミッションクリティカルな活動に注力することができます。今後、ERPはRPAの機能を取り込み、より自動化が進むと予想されます。
4. 拠点内・拠点間の統合・連携を強化する
現在のグローバルエコノミーでは、メーカーは複数の施設を持ち、時には複数のタイムゾーンや国にまたがっていることがよくあります。複数の拠点を持つ企業は、遠隔地にいる従業員、サプライヤー、顧客とのコミュニケーションだけでなく、同じ場所にいるチームを統合するためにも、テクノロジーが果たす役割を認識しています。重要なことは、ERPシステムは、組織が異なるビジネスユニット間で標準化されたプロセスを確立し、通貨や言語などの構成可能な設定を通じて、各サイトのニーズに合わせて手順をローカライズするのに役立つということです。たとえば、ERPシステムはよく、請求書の出荷コストを削減し、スタッフの関与を最小限に抑えることができ、拠点間の請求書処理を簡素化するために活用されています。また、ERPを利用した請求書発行や現金回収により、拠点間で収集される他の重要なデータと同様に、財務情報はいつでも、どこでも、許可されたユーザーによってアクセス可能であることが保証されます。
この4つのキードライバーは、ビジネスがどのように進化しうるか、また進化すべきかを正直に把握することに役立ち、ビジネスの戦略的目標を設定することを可能にするのです。
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