ニーズに合った最適な MES システムを選択するには

自動化とスマート製造による将来的にオペレーションを高めるという要件により、製造実行システム (MES) への関心が高まっています。組織が MES を検討するのは、ERP の変更を予定している場合、新しい生産ラインへの投資ではなくアセット利用率の向上を目指している場合、現在のソリューションが企業ニーズを満たせない場合などです。ただし、MES を使用して将来的なオペレーションに対応する必要性を認め、MES の多くの利点を理解している一方で、ニーズに適した MES を選択する方法を知る組織は多くはありません。適切な MES を組織が確実に選択するには、考慮すべき主要な要素があります。

 

製造実行システム (MES) の主要な評価要素 

 

1. MES の選択で考慮すべき主な要素

選択プロセスの重要な部分は、MES が何を行うかを正確に特定することです。このためには、まず ISA-95 モデルなどのプラントオペレーションモデルを使用するとよいでしょう。

• 最初に、現在の状態を判断し、ERP などのアプリケーションの状況を確認します。リアルタイムの可視性の向上やオペレーターの効率改善などに向けて、現在の要件の一部が MES でより適切に処理できるかどうかを検討します。 
• 次に、ギャップを特定し、MES で管理したい情報と収集する必要があるデータを定義します。
• 差し迫った要件の先にある将来の状況を見据え、MES の拡張によってペーパーレス化とリアルタイムの可視化が実現すると、他のどの製造現場の業務でメリットが得られるかを検討します。
  ベンダーの選択にあたっては、そのソリューションが標準として、つまり開発を必要とせずに現在のニーズに対応できることを確かめます。そのソリューションが将来的に必要な拡張機能を提供できるかどうか、そのソリューションがどの程度すぐにまたは簡単な構成で利用できるかを確認します。
  
  
  

2. MES の機能が業界の要件に適合していることを確認する

各業界にはそれぞれ固有の要件があります。ディスクリート製造業界では、製品のバリエーションの管理、使用部品および製造部品のトレーサビリティ、複雑な組立工程などの一般要件があります。食品加工をはじめとした加工業界では、使用期限に基づいた原材料や成分の使用、トレーサビリティ、温度管理、金属検出、包装工程などの一般要件があります。 
ビジネスのプロセスに適した機能を標準で提供し、所属業界でソリューションの実装実績を持つベンダーを候補リストに挙げます。また、MES ソリューションは ISO9001、IATF 16949、FDA 21 CFR Part11 など、必須の業界規格に対応したものである必要があります。

 

3. アーキテクチャおよび MES ソリューションと既存のシステムの統合

MES は ERP と生産設備の間の中間層となるシステムです。「経営マネージメントから製造現場までの完全な統合」をはじめは目指していないとしても、「接続性」と既存環境との統合が容易であることを優先します。なぜなら、完全な統合は非常に高い価値をもたらすことになるからです。ライン、機械、計測機器、ERP や CMMS などの主要なアプリケーションのうち、どこからのデータを送受信する必要があるかを考えます。そして接続の構築がどの程度簡単か、MES ソリューションがどの程度拡張性があるか、特に時間とともに増加するデータの量とプロセスを管理できるかどうかを確認します。
複数の生産工場を持つ製造企業には、すべての工場にわたるプロセスの標準化とソリューションの展開に関して検討すべき 2 つの重要な点があります。すべての工場が同じではなく、同じ製品を生産する場合でもプロセスが異なる場合があり、ワークフォースやデジタル成熟度も異なります。MES ソリューションがマスターデータの標準化のニーズや工場の違いによるニーズにどう対処できるかを考慮します。ロールアウトは簡単か、業務にどの程度の変革が必要かを検討します。
もう 1 つの検討事項は、MES をホストする場所です。操業は24 時間 365 日体制か、プロセスにとって MES がどの程度重要か、オンプレミスに MES が必要か、クラウドでも対応できるかを検討します。 

 

4. 製造実行システムのコンフィグレーションと利便性を評価する

日々の業務管理の観点からは、メンテナンスが容易で生産要件に適応できる MES を検討することが重要です。新しいラインや新しい機械の追加、レポート作成などの基本的なシステム構成を簡単に実行できるかを確認します。追加コストをかけずにチームが簡単に利用できる設定ツールがソリューションで提供されていることを確認するのが一番です。 
同様に重要なのは、製造現場でのソリューションの使いやすさです。使いやすさは MES プロジェクトの成功の鍵であり、確実な導入を決定づけます。そのため、利便性を選択基準の一部として組み込むことを推奨します。 
次の重要な点を確認します。オペレーターの業務をどのようにサポートするか。それによりオペレーターに裁量が与えるだけでなく、エラーのないオペレーションに向けたプロセスのガイドとなるか。アプリケーションがすべての機能でシームレスなエクスペリエンスを提供するか。アプリケーションが製造現場向けに設計されているか。タッチスクリーンに対応しているか。業務の特定のニーズを満たすように画面を簡単に設定できるか。 

 

5. ベンダーの実装サービスとサポートサービスを評価する 

候補となる MES ソリューションのリストを作成したら、時間をかけてベンダーのソリューション提供プランを把握します。ソリューションはベンダーによって実装されるか、それともサードパーティによって実装されるか。ベンダーのパートナー企業のエコシステムはどのようになっているか。連絡先は 1 つか。どのような方式で提供されるか。自社で対応できる内部機能とリソースを考慮して、システムの設計と実装の段階でベンダーまたはベンダーのパートナーの追加サポートを得る必要があるかを現実的に検討します。加えて、次の点も確認します。ソリューションを必要とする緊急性と予想される ROI (投資利益率) を考慮すると、ソリューションを使ってどの程度の期間で最初のラインまたは工場を稼動させることができるか。どの程度の期間で他の各ラインや工場に展開できるか。稼動後のサポートはどこから提供されるか。多言語サポートは利用できるか。 
これは広範なリストですが、できるだけ早く実際にメリットを得られるよう、ソリューションがどのように実装されるかを調べることが重要です。

 

6. ベンダーの製品戦略と新たなテクノロジー

MES は長期的な投資であり、自動化とロボットへの投資を強化します。MES で収集された大量のデータによって、予測的メンテナンスの実施、スケジュールの最適化、エネルギー消費の削減などに向けた、AI (人工知能)/機械学習 でのデータ活用が可能になります。 
そのために製品に対するベンダーのビジョンを確認します。製品開発をさらに進める投資計画はどのようになっているか。MES 機能とベンダーのアプリケーションのエコシステムを組み合わせることで、スマート製造と IIOT の導入への明確な道筋が見えるか。

 

7. MES システムのユーザーによるフィードバックを確認する

最終的な選択の前に、Gartner Peer Insights など、信頼できるレビューウェブサイトを参照して、全体的なユーザーの評価を把握し、業界内の顧客の意見を探します。可能であれば、工場ツアーを手配します。それにより、ソリューションの稼動状況を目にするだけでなく、実際に使用しているユーザーから実装体験について貴重なインサイトを得ることができます。

現在と将来のために最適な MES システムを選択する

結論として、MES は戦略的投資です。MES システムの選択はデジタル変革において実際に不可欠なステップであり、MES はパフォーマンス、品質、効率、無駄の削減に多くのメリットをもたらします。適切な MES を確実に選択し、市場を理解するためにアドバイザリーサービスに助言を求め、先に挙げた 7 つの側面による体系的なアプローチで適切なベンダーの候補リストを作成し、バランススコアカードなどのツールを使用して、最終的な決定において重視する分野に合わせてベンダーを調整します。